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霊場恐山で地獄と極楽を歩く

霊場恐山で地獄と極楽を歩く

下北半島には、日本三大霊場のひとつ、恐山があります。

長い山道を越えた先にある、地獄とも極楽とも見えるような不思議な場所。

パワースポットであり、毎年たくさんの参拝者が訪れる恐山の魅力に迫ります。


死者の魂があつまる霊場・恐山

下北半島に位置する霊場・恐山は、今からおよそ1,200年前、慈覚大師円仁(じかくだいし・えんにん)によって開かれた霊場です。円仁が彫刻した一体の地蔵「延命地蔵菩薩」を本尊としています。

地元では古くから「死ねばお山(恐山)に行く」と言い伝えられてきました。恐山はあの世に最も近いとされ、死者への供養の場・故人を思い偲ぶ場として、日本各地から参拝客が途絶えることなく訪れています。


恐山と呼ばれていますが、実際は「恐山」という名前の山が存在するわけではありません。

釜臥山をはじめとする8つの山々に囲まれた宇曽利湖(うそりこ)があり、宇曽利湖の湖畔に沿うように「霊場恐山 恐山菩提寺」があります。参拝するには入山料が必要です。


目の前に現れる、荘厳な山門、地蔵殿

むつ市から、標高の高い山道を進んだ先にある恐山。恐山に向かう道沿いの参道には、お地蔵さまが祀られています。恐山に近づけば近づくほど多く見かけるお地蔵さまと、濃くなっていく硫黄の匂い。それだけで、普通の山道とは違う何かを感じます。


山道を抜け、不気味なほど透き通った宇曽利湖を湖畔沿いに進んでいくと、最初に見えるのは「太鼓橋」です。

「三途の川」に掛かる「太鼓橋」は、この世とあの世への架け橋とされています。

太鼓橋の勾配は急で、悪人には橋が針の山に見えて渡ることができないのだそうです。

霊場恐山には1周3kmほどの参拝コースがあり、徒歩約40分で巡ることができます。

総門から恐山菩提寺の境内に入ると、まず目に入るのが荘厳な「山門」です。恐山の名前らしく重厚で、周囲の景色すら飲み込んでしまうような立派な門。恐山は山に囲まれた土地にあるため、天気がころころ変わります。雨雲で暗いときや、霧がかった天気のときにこの山門を見るとさらに重々しく見え、芥川龍之介の『羅生門』を彷彿とさせます。

山門を抜けると「地蔵殿」があり、地蔵殿の周囲にはいくつものお地蔵さまが祀られています。

恐山に来るまでの道にもたくさんのお地蔵さまがありましたが、敷地内にも数多くのお地蔵さまが祀られています。総門前には「六大地蔵」、地獄のなかには「水子供養地蔵」「八葉地蔵菩薩」「五智如来」「慈覚大師堂」など。それぞれのお地蔵さまの趣きある表情にも注目です。

136の地獄と延命地蔵尊

地蔵殿の左手に広がるのは、火山岩で形成された「地獄」。現世で犯した罪の罰を受ける136もの地獄をあらわしているのだそうです。辺りは荒涼としていて植物もほとんどなく、至るところから火山性ガスが噴出していて、まさに地獄のような景色が広がっています。

また、地獄には参拝客が供養のために積んだ石や小さなお地蔵様の人形が無造作に置かれています。人々の思いや祈り、願いが込められた営みが感じられる場所です。

人々が大切な人を思う念が長年積もり積もった場所。だからこそパワースポットでもあり、一般的なお寺では感じられないような空気感が形成されているのです。

地獄のなかで最も高い場所にあるのが、恐山菩提寺の本尊となっている「延命地蔵尊」です。急勾配の岩場を進むと近寄ることができ、この辺りからは恐山の本堂や社務所、宇曽利湖が一望できます。

延命地蔵尊の足元にもお地蔵様の人形があり、たくさんの参拝客が延命を誓願するために岩場を進んできたことがわかります。

真っ白な砂浜に、透き通った湖面。魅惑の極楽浜

地獄から続く岩場地帯を抜けると風景は一変し、宇曽利湖が目の前に見えてきます。この場所は「極楽浜」と呼ばれ、晴天の日には湖面が驚くほど透き通って美しい風景がみられます。真っ白な砂浜とエメラルドに輝く湖畔が不気味なほど。極楽なのか、天国なのか…先ほどの荒涼とした雰囲気から全く別な世界に来たかのようです。ここが青森県であることも忘れてしまいそうな景色に、思わずうっとりしてしまいます。

極楽浜に2012年に建立された東日本大震災供養塔は、東日本大震災の犠牲者追悼を念じるメッカとなっていて、毎年供養祭が執り行われています。供養塔の背面には大小数十個の手形が彫られていて、故人の手形に見立て、故人と手を合わせられるようになっています。

敷地内には泉質の異なる4つの温泉も

境内には男湯、女湯、男女入れ替え制、混浴の4つの湯小屋があり、それぞれ「冷抜(ひえ)の湯」「古滝(こたき)の湯」「薬師(やくし)の湯」「花染(はなぞめ)の湯」と名前が付いています。いずれも硫黄泉で、参拝者は自由に入浴できます。観光客のなかには、温泉に入るために遠方からやってくる方もいるんです。



恐山は、故人を偲び、弔うために足を運ぶ人々の、長年の営みが感じられる場所であり、地球の営みが感じられるエネルギーあふれる場所でもあります。

多くの人の思いが募った場所だからこそ、地獄にも極楽にも見える。その景色を、ぜひ体験してみてください。

  • 恐山霊場/恐山菩提寺

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